(前エントリーのつづき)
働く気が起きないというのも、何様のつもりかと自分でも思うが、
決して働きたくない訳じゃない。今すぐにでもどこかに勤めたい。
ただ、この国で「納得して働ける環境」を見つけるのは、
私にはものすごく難しく思えるのだ。日本よりずっと。
納得して働くというのは、自分の想い描く理想通りの会社で働きたい、
高いお給料が欲しい、長いホリデーが欲しいということではない。
そりゃ、環境が良いに越したことはないけれど。
私が納得出来る環境というのは、みんながお互いの仕事を認め合って、
常に精一杯できる範囲で努力して、チームとして成立している職場だ。
私は、いわゆる日本風の残業当たり前の気風も嫌じゃない。
仕事は時には辛くても、その分やりがいを感じられるものだ。
それで精神や身体に支障を来すようでは困るが、
みんなハッピーでしかもらくちんな仕事なんてないと思っているし、
今までの経験でもそんな楽しいだけの職場はなかった。
辛いことのほうが多かったところもある。
休みもなく働き続けなければいけなかったところもある。
人間関係が難しかったところもある。
それでもどこもしあわせな職場だった。辞めたくて辞めたところはない。
それは自分の存在が認められているという自信や、
辛くてもそれに見合う評価がされていると思える瞬間や、
誰かの役に立っている(ひとりよがりかもしれないが)誇りや、
仕事の後の一杯を楽しめる仲間の存在、そういうものがあったからだ。
その点、ポルトガルはどうだろうか。
たった2年だけでこの国をジャッジするのも失礼な話かもしれないが、
ポルトガル人は「どう楽するか」「どう責任を回避するか」を優先する。
自分が一番大切。会社、仕事仲間、社会は二の次三の次。四の次かも。
周りの人間、大学で出会った人、バイト先で出会った人、
メディア、そして自分自身の友人達を見てきて、そう感じるのだ。
ポルトガル人のメンツのために付け加えると、
ポルトガル人は基本的にみんな「いい人」だ。今まで「悪人」に会ったことがない。
人をわざと傷つけようとしたり、陥れようとしたりする人を見たことがない。
統計上でも、OECD国の中でトップクラスの「移民に平等な国」ということだ。
右傾化しているヨーロッパにおいて、高く高く評価されるべきだと思う。
旧植民地とも良い関係を保てているのはポルトガルくらいだろう。
これについて、私は異論は無い。
ただ、この国が大航海時代の光を完全に失っている点、経済的に自立しない点など、
目立つマイナス面は、私は国民性が大きく関連していると信じている。
必要以上の仕事はしたがらないクセに見栄っ張り。
問題が起きると解決の前にすぐに人のせいにする。
まずなんでも言い訳から始まる。ごめんなさいが言えない。
でも欲しいもの(権利、福利厚生、ホリデー)はしっかり主張。
社会問題に対してみなそれなりに意見し憤慨し討論するけれど、
はっきり言って誰も「社会の一端を担っている」と思ってないように見える。
だから歯車が回らなくなる。汚い政治やコネが慣習化する。
政治は自分たちに得なことを造り出してくれると信じている。
「痛みを分け合って乗り越える」なんて考えたことないんだろう。
腹が立つこともあるが、私はここでは部外者で、外の人間だ。
彼らにお説教する立場でもないし、そんなものはただのおせっかい。
国民が自分たち自身を見直さなければこの国の復興はないと思っても、
それはここの人たちが決めること。私はブログで愚痴っていれば良いのだ。
見えないところで精一杯がんばってる人たちも沢山いるんだろう。
ただこういう「常識」のなかで、私自身が職場を見つけるのは、
至難の業に思えて仕方ない。
そんな勝手なイメージが私のモチベーションを下げている。
日本で仕事を探せば、また違った苦労がある。
個性が認めてもらえない、過労、モラハラ、セクハラ、
残業、過剰な付き合い、周りの視線、などなどなど。
でも今までの私の経験上、常に自分の居場所は見つかったものだ。
私は、いわゆる「日本人らしい」タイプではないだろうし、
メイクもできないし、くしゃみはでかいし、人前で鼻をかむし、
かわいい訳でも大人しい良い子でもない。
企業で一番扱い安い人種ではないだろう。
高校卒業してすぐに躊躇も無く日本を出たのは、
ティーンネイジャーの好奇心や憧れ、アカデミックな目標以外に、
それなりに「日本社会不適合者」を自覚していたからだろうと思う。
でも日本には沢山の人がいる。人口が多く、流動もある。
経済規模もポルトガルとは比べ物にならない。
よく日本や日本人は文化的ステレオタイプで語られがちだが、
人の数だけ、チョイスがある。
個性や特性を評価してくれるところは探せば見つかる。
みんなが苦しくて当たり前だと思っている。
それを協力して乗り越えようとがんばっている。
自分だけ良ければ良い、という考え方では、
ちいさな島国では暮らしていけないのだ。
そんな気質は、やはり自分に合っていると思う。
そんな風に考えてみると、
例え今のような生活水準が保てなくても、
遊ぶ時間が減ってしまっても、家のことが出来なくても、
日本で仕事をしたいなあと思う。